🏢 固定資産と減価償却の基礎まとめ
ねらい: 会計初心者でも「なにを・どこに・どう表示するか」が一目でわかるように、固定資産と減価償却のポイントを図表で整理します。
🧱 固定資産とは
企業が 1年以上 の長期にわたり使用する、事業活動のための資産を指します。短期売買目的の流動資産とは区別します。
| 区分 | 例 | ポイント |
|---|---|---|
| 有形固定資産 | 建物、機械、車両、備品、土地 | 物理的な形がある資産。土地は原則償却しない |
| 無形固定資産 | ソフトウェア、特許権、商標権 | 形のない権利等。耐用年数に基づき償却 |
| 投資その他の資産 | 関係会社株式、長期貸付金、投資不動産等 | 投資・長期保有目的 |
用語メモ: 取得原価=購入価格+付随費用(運搬費、据付費など)。帳簿は取得原価を起点に管理します。
⚙️ 減価償却の意義
固定資産の価値は使用や時間経過で減少します。その減少分を使用期間にわたって費用配分するのが減価償却です。
- 目的: 取得時に一括費用化せず、各会計期間の成果と対応させて正しい損益を表示する(期間対応の原則)。
- 代表的な方法: 定額法、定率法、(無形資産の)定額法 等。
例)100万円の機械を耐用年数10年・残存価額ゼロ・定額法
各期の減価償却費=1,000,000 ÷ 10 = 100,000円/年
🧾 BS(貸借対照表)上の表示:固定資産と減価償却累計額
表示には「間接表示」と「直接表示」の2方式があります。
🪞 1)間接表示(一般的)
- 固定資産は取得原価のまま表示し、直下に減価償却累計額を控除項目(マイナス)で並記。
- 帳簿では「固定資産(取得価額)」と「減価償却累計額」を別勘定で管理。
(貸借対照表:資産の部)
有形固定資産
建物 100,000
減価償却累計額 ▲30,000
建物(純額) 70,000
🧮 2)直接表示(純額表示+注記)
- 「固定資産 − 減価償却累計額 = 純額」を1行表示。
- 注記(脚注)で「取得価額」「減価償却累計額」等を補足開示。
(貸借対照表)
有形固定資産(純額) 70,000
(取得価額100,000、減価償却累計額30,000)
実務では、比較可能性と明瞭性の観点から間接表示が主流です。純額の見やすさを優先するときは直接表示+注記を選択します。
💰 PL(損益計算書)上の表示:減価償却費
資産の用途に応じて表示区分が異なります。
| 資産の用途 | 主な対象 | PL上の表示区分 | 勘定科目例 |
|---|---|---|---|
| 営業活動で使用 | 店舗設備、事務機器、車両 等 | 販売費及び一般管理費(または製造原価) | 減価償却費 |
| 製造のために使用 | 製造設備、工場建物 等 | 製造原価(製造間接費) | 減価償却費(製造) |
| 投資目的で保有 | 賃貸用建物、投資不動産 等 | 営業外費用(投資損益区分) | 投資不動産減価償却費 等 |
📌 表示の原則(要点)
- 原則: 事業用資産の減価償却費は販売費及び一般管理費(製造業は製造原価に配賦)。
- 投資資産: 投資目的で保有する資産の償却は営業外費用に計上(企業の表示方針に合わせて「投資損益」内に区分表示することも)。
🧭 まとめ
| テーマ | 要点 |
|---|---|
| 固定資産 | 1年以上使用する事業用資産(有形/無形/投資その他) |
| 減価償却の意義 | 価値の減少を期間配分し、各期の損益を適正化(期間対応) |
| BS表示 | 間接表示(取得原価 − 減価償却累計額)/直接表示(純額+注記) |
| PL表示 | 営業資産→販管費(または製造原価)、投資資産→営業外費用 |
結論: 実務では間接表示+注記が見やすく、用途に応じたPL区分(販管費/製造原価/営業外費用)で整合的に運用するのが基本です。
※必要に応じて、減損、資本的支出と修繕費の区分、リース資産(使用権資産)の償却表示なども追補可能です。